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2013-04-24

愉快な奴ら。

 これを書きはじめている現在、空は白みはじめている。最近この色の空を眺める機会が増えた。芝居をやっていた頃はこんなことは無く、稽古疲れで飯食って寝るだけのプライベートだった気がする。こう書くと、芝居はただただハードで、それに従事している僕は物好きなマゾヒスティックに見えるが、その実態は稽古場にはフェラーリで乗り付け、常に両手に女性を抱え、枯れた土地には薔薇を咲かせ、ハリウッドからの誘いを断る、そんな優雅で余裕な毎日を送っている。
 そんなフェラーリでハリウッドな僕だが、本番の客からの視線やら終わった後の達成感やらが糧になっているのが実際のところ。しかしそれ以外にも、芝居は面白い仲間と関われるから好きなのだ。今回はそのエピソードを紹介しようと思う。


 昨年の4月ごろの話。僕は当時、劇団野の上さんの公演の照明として参加していた傍らで、『脳内会議』という芝居を控えていた。この芝居は再演であり、初演は僕が1年の頃に劇団プランクスターが上演した。この台本というのが中々の曲者で、初演の役者が持っている台本=紙媒体としては存在していたのだが、パソコン上のデータが無かったのだ。一時はそれを含めて一悶着あったのだが、そこへ颯爽と現れたのが演出の髙橋R之介である。彼は言った。
「俺が全部打ち直しますよ」
 皆の目にハートが浮かんだ。資産家の僕も例外ではなく、彼には2,3個油田をあげた。絵に描いた先生のような人で不思議と説得力もあり、僕は安心してアルバイトと野の上さんに力を注いだ。
 とある日、家路についた僕は作業でパソコンとにらめっこをしていた。そんな僕のもとに一通のメールが届く。差出人はR之介。何だろうと思いつつ開いた本文にはこうあった。
「すみません・・・台本のデータを・・・消してしまいました・・・」
 何故か笑っていた。頭の中では彼の「今、8割方写し終わりましたねー」という言葉がリピート再生されていた。しかし、役者としては彼を叱らないわけにはいかなく、笑いながらも「なにやってんだ!!」と返信した。彼は一言だけ返してきた。
「やってまった・・・」
 手元の携帯電話から溢れ出る悲壮感と哀愁に、爆笑したのを覚えている。この瞬間、彼への協力は惜しまない決心をし、すぐさま電話をし、台本写し代行を請け負ったのである。完璧だと思っていた彼の壁が崩壊しきった瞬間なのだった。

 もう一人、僕の琴線に常に触れ続ける人物がいる。A立シンヤという男だ。彼とは過去3回共演している。そのうちの一つは先ほどの『脳内会議』だが、あまり絡みが無かった。最初に共演したのは一昨年の『真実は笑わない』という作品で、これもまた絡みがあまり無かった上に、彼自身忙しくて芝居に専念できてなかったために苛立ちを感じることのほうが大きく、彼の魅力に気付けなかった。
 しかし、彼が僕の琴線をバンバンはじいてゴリゴリのロックをかき鳴らした出来事があった。去年の『その場しのぎのひと時を』という作品である。彼の役どころは天然な市長、僕は全く笑わない副市長だったのだが、この設定がまたいけなかった。ことあるごとに彼の天然っぷりが僕を襲ってくることになった。あるときはネクタイを蝶結びで現れ、あるときは全力で競技ダンスを披露し、逃げる段取りの時に起き上がれずソファごと追っ手につぶされ、真剣に向き合う場面では鼻水を滴らせる。
 今考えても僕は悪くないのだが、笑ってはいけない設定上笑ったら僕が悪く、笑わせられなくても彼は何も悪くないのである。それに加え、彼の行動は僕に対しては打率十割なのである。常にwin-loseの関係なのである。

 O山巧という男も、僕の演劇史の中には必ず出てくる。
 あれは忘れもしない2009年のおそらく12月で、日付はうろ覚え。今の下宿を見学に来たときのことだ。ちなみに見学時期が早いのは、僕が推薦入試で入学したからである。初対面特有の低姿勢で大家さんからトイレなどの紹介を受けているときに、O山氏は突然現れた。
大家「あらO山さん。こちら、見学にいらっしゃった納谷さんですよ」
O山「あ、ども」
 初対面ながらに無愛想な男だなと感じたが、そんなことは顔に出さず、僕はフレッシュにこんにちはと返した。すると彼は僕を見定めるように顎を撫でながら、こう放った。
「君、演劇に興味は無いかい?」
 意味が分からなかった。なぜ演劇を薦められるのか。聞くところによると、彼は演劇サークルに所属しているというのだ。この時点で、「演劇」=「目の前の男」=「胡散臭い」というイメージで固定されつつあった。とっさに「考えておきます」の返事をし、彼はやや消化不良ぎみにトイレに消えていった。今思えば、彼はおそらく二日酔いだったのだ。彼の部屋の前の廊下には一升瓶が何本か並んでいた。帰りには両親と「あの人怪しかったな(笑)演劇とかやんねーべな?」「あたりめーだべ」というやり取りをしたものだ。
 しかし、当時水曜どうでしょうにのめりこんでいた僕は大泉洋つながりでTEAM NACSを知り、演劇に興味を抱くことは想像に難くなく、下宿の怪しい男を思い出し、2つある演劇サークルから彼のいる方に入る決意をした。
 だが、こともあろうか彼は僕が下宿に入る一月前に夜逃げをしていたのだ。しかも、僕は彼の名前も顔も思い出せず、サークル選びは本当に悩んだ。結局マップレスに所属したが、彼の所在を尋ねるときの僕の言葉は決まって、「お酒が大好きな男の先輩はいますか?」だけだった。

 こんな愉快な奴らに出会えるというだけで演劇というものには価値があると思う。本人達には絶対に言わないが。
 今度奴らとドライブにでも行こうかな、僕のフェラーリで。


 ではでは。
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劇研マップレスメンバーによる徒然日記。

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